大学は職業訓練所になるべきか。人文社会系の学部は不要なのか。ロシア・東欧・北欧旅行を通じて思ったこと
ロシア、フィンランド、そしてバルト三国と自力で飛行機、ホテル、交通機関を予約して30kgのスーツケースを持ってトラムに乗る。
そんな強引な旅行中に強く感じた疑問があります。
それは「大学は職業訓練所になるべきなのか」ということです。
私は大学4年であと少しで社会人になる身ですが、この卒業旅行中に教養の大切さ、「役に立たない」と切り捨てられている大学での学びがどれほど世界の見方を変えるかを痛感しました。
2015年に政府が国立大学の人文社会系学部を縮小していく方針を明らかにしました。このような風潮の中で、2017年に大阪大学の文学部長・金水さんが卒業式で話した「文学部で学ぶ内容は人生の岐路に立った際に真価を発揮する」という式辞が話題になりました。
特に近年政府が軽視している芸術・歴史・哲学、といった文学部の学問領域。今回の旅行を通じて私は、これらの学問領域は旅行好きな人にとって、その旅行をより豊かな経験にしてくれる価値あるものだと感じました。
芸術を学んでから訪れるエルミタージュ美術館
実は、これまで私は芸術に興味が全くありませんでした。
有名な絵だけ見て写真を撮ればいいや。くらいに思っていませんでした。
ですが、大学でボッティチェリの「春」をひたすら扱う授業で芸術学的観点に基づいたな絵の見方を学び、美術館の回り方が変わりました。
この絵に描かれているミカンは絵を依頼した貴族の家紋なんだとか。
また、「フローラ」という女神が描かれているのですが実はイタリア語のフローラという綴りは「フィレンツェ」に似ていて、絵の持ち主である貴族がフィレンツェを支配している、という意味があるとも考えられているそうです。
(私の解説が間違っている可能性もあるので鵜呑みにしないでください)
大学でこのような絵の見方を学んだおかげで、エルミタージュ美術館を100倍楽しむことができました。
歴史を知って訪れるバルト三国
海外旅行とその国の歴史は切っても切り離せない存在です。建造物や街並みには数百年の過去があります。
ロシアの場合、サンクトペテルブルクの街並みはフランスやイタリア、ドイツなどのヨーロッパ諸国の街並みと非常に似ています。
1721年からおよそ200年間にわたりロシア皇帝がロシアを支配していました。そのロシア帝国の首都がここサンクトペテルブルクでした。
当時のロシアは西欧諸国に比べて近代化が遅れており、彼らに追いつき追い越すために国内の西欧化を進めていました。サンクトペテルブルクの街も例外ではなく、列強と肩を並べるために西欧諸国と似た街並みが作られました。
だからこそ、現在のバロック様式、クラシック様式、モダン様式が散りばめられたサンクトペテルブルクの姿があります。
また、フィンランドやエストニアにはロシアに支配されていた過去があります。当時ロシアが被支配国に勝手に立てた教会が今も残っています。
このような歴史を知った上で実際の建造物を見ると、どことなくその教会が悲しげに見えたり他の教会よりも人気がないように見えたり、全く違う表情を見ることができます。
何も知らずにその土地を訪れるのと、多少なりとも歴史を知った上で訪れるのとではその国から得る印象が180度変わると思いました。
海外旅行を愛する者として歴史に興味を持つことは、自分にとっても大きな価値があります。
言語学に興味が出た現地語
この旅行では言語学にも興味を持ちました。今回訪れたのはロシア、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニアです。
その中でフィンランド語とエストニア語はお互いに意思疎通ができる程度に似ている言語だそうです。どちらもウラル語から派生した言葉で、フェリーで80kmという地理的距離もあって似ている単語も多いです。
そもそも言語がどのように生まれたのか、どう派生したのか興味が湧くきっかけになりました。まさに、言語学が専門としている領域の一つだと思います。
宗教学の面白みを教えてくれたロシア正教
今回の旅行ではカトリック、プロテスタント、そしてロシア正教の教会を訪れました。
ロシア正教もキリスト教から派生していますが、十字架が三本線である、教会は玉ねぎ型の屋根、教会内にオルガンがない、などさまざまな特徴があります。
一般的な人が想像する教会は上の写真のようにステンドグラス、キリスト像や絵があるカトリック教会です。
一方で、カトリックに対抗する形で生まれたプロテスタントは上の写真のようにキリストの像、豪華な装飾等が一切なく、あるのは十字架のみ。
どのように宗教が派生していったのか、どのような信仰が行われているかに興味を持ちました。
最後に
大学で人文社会系学部にいたため、前述の学問の存在、扱う学問領域を知ってはいたため、うっすらと知識のある状態で旅行に行きましたが、正直真面目に追究した学問はありません。
そのため、旅行を通じてこれらの学問への興味が深まり、「もっと講義を受けておけばよかった」という後悔が募りました。
本旅行を通じて、社会で働く上では一見必要のないように思える知識の積み重ねこそ、私たちの世界の見方を変えてくれるものだと思いました。
だからこそ、芸術、歴史、文学、言語、宗教といった人文社会系の学問を軽視する風潮には断固反対です。
真面目に書くのは性に合わないですが、どうしても記録に残したかったのでブログに残してみました。
拙い文章で上手く伝えられませんでしたが、最後まで読んでいただけたのなら嬉しいです。